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19歳の時、私は初めて人を愛した。
どうしようもない出会い方だった。
中学生の頃にSNSで出会って5年間オンライン交流を経て合コンを開き、初めて顔を合わせた。そうしてその日のうちにセックスした。それから3年付き合っていた彼氏と別れ、その人と付き合っているのか付き合っていないのか不明瞭な同棲生活を始めた。(実はここにはもう一人同居人がいたのだが)
彼は常に鋭利な言葉遣いをしていたし頭が抜群にキレたから、近づきづらい雰囲気を醸していた。けれど、彼が自分のテリトリーにいれた人間にはいかんせん甘かった。鋭い見た目のくせに、ぶつかっても全く痛くないもやっとボールのような人だった。
毎日がスリリングだった。
田舎から出てきて平々凡々とした一人暮らし生活を送っていた私には、深夜に自転車に乗ってラーメンを食べに行ってカラオケで夜を明かすことも、セックスだけをして休日を終えることも、学校をサボって手を繋いでスケートに行くことも何もかも新鮮に見えた。
そして毎日体で愛を表現した。
学校に行って帰ってきて、買い出しに行きお米を炊いて料理をして同じ時間にお風呂に入ってセックスをして抱き合って眠った。抱き合って眠ったのは嘘。私は暑がりなので人とくっついて寝るのが苦手なのだ。
それから、私は彼が書く文章が最高に好きだった。
筋の通った文章、ひらがなを使うタイミングや句読点の場所、彼と彼の周りの人間関係や環境が背景に垣間見える濃度が、私は気持ちよかった。「考え抜く」ことができる人なので、きっと筋の通った文章が書けたのだろう。そのおかげで私たちは原子・分子レベルのくだらないことから、暗い自分の昔話まで、本当にたくさんのことを話して考えた。安いお酒を片手に彼の家で、デートの帰り道の喫茶店で、モーニングを食べに行ったファミリーレストランで。グラデーション的に話を深めていく彼の話し方もまた、大好きだった。
まあ、最終的に私はフラれてしまったのだが。
離れていく彼の気持ちにも、他に気になる女の子が近くにいることも薄々気づいていた。気づいていたけど、どうすることもできなくて今まで通りに行動で愛を伝え続けた。
でもだめだった。
離れて行く気持ちは一方通行で、私がどんなに縋り付いたって戻ってくることはなかった。
彼が私に愛想を尽かした理由は、私がたった一言「好きだ」とか「愛してる」とか言えなかったから。
元々付き合っていた彼氏と別れたと言えど、彼はずっと不安を抱いていた。好きだと言わない私に。付き合って欲しいと言わない私に。
そんなの、自分から切り出せばいいじゃない。と思う人もいるかもしれないけれど、それは違う。もう、どうしようもなく全般的に私が悪かった。私が襟を正して正式に伝えるべき言葉であったのに。最後まで言えなかった。
もちろん反省しているし、多大な後悔もしている。きっとあのまま一緒にいられたら、一生一緒だったとも思う。本当に大事な人を傷つけるだけ傷つけて、相手に「別れを切り出す」という大きな仕事をさせてしまった。この場を借りて、ごめんなさい。
すごく楽しくて、すごく悲しくて、すごく学んだ恋愛だった。
結局愛だろうと何だろうと、言葉にしなきゃ伝わらない。どれだけ目に見える形でも体に感じる体温でも、それに伴う言葉がなきゃあ、いけないんだ。
なかなか簡単にできることではないけどさ、頑張ってみようって思うよ。
(この投稿にタイトルをつけようと思ったのだけれど、つけてしまったらなんだか自分の人生にタイトルがついてしまうような気がした。)